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【pickupニュース】BCP計画の策定、不動産業界は低位の10.4%

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TDBが注目のBCPに関する企業調査を実施
株式会社帝国データバンクは11日、「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」を行い、その結果をとりまとめて公開しました。この調査は「TDB景気動向調査2020年5月調査」とともに行われたもので、BCPに関する調査としては2016年6月以降、毎年実施してきたため、今回が5回目のものとなっています。

調査期間は2020年5月18日~5月31日、対象は全国23,675の企業で、有効回答企業数は11,979社、回答率50.6%でした。甚大な被害をもたらす自然災害や、新型コロナウイルスをはじめとする感染症などのリスクがクローズアップされる中、企業にはその影響を最小限にとどめ、事業の継続や早期復旧ができる体制作りが求められるところとなっています。

不動産関連の企業においても同様で、発生後の対応措置など事前の備えが、事業活動継続に加え、企業価値の維持・向上の観点でも重要と考えられますが、どの程度BCPの策定などが進んでいるのでしょうか。

・事業継続計画(BCP)の策定状況
策定している:16.6%(前年比+1.6ポイント)
現在策定中:9.7%(前年比+2.4ポイント)
策定を検討している:26.6%(前年比+3.4ポイント)
策定していない:39.4%(前年比-5.9ポイント)
分からない:7.7%(前年比-1.4ポイント)

まず自社におけるBCPの策定状況について尋ねたところ、「策定している」が前年の2019年5月調査に比べ、1.6ポイント増加、16.6%となりました。「現在策定中」という回答も2.4ポイント増加し、9.7%になっています。

さらに「策定を検討している」という企業も前年より3.4ポイント増加し、26.6%となりました。これら3つを合計すると52.9%で、前年より7.4ポイント、前々年より8.0ポイント増加しています。52.9%というこの値は、調査開始以来の最高でもあります。

策定済みの企業は、まだ全体の16.6%と決して多くありませんが、年々少しずつ増加してきているほか、策定に向けて動く企業も増えていることが分かりました。今回、「策定していない」は39.4%で、4割をついに下回っています。

・企業規模別策定割合
大企業:30.8%
中小企業:13.6%
小規模企業:7.9%

企業の規模別で「策定している」割合を分析すると、「大企業」は3割を超えて策定済みで、全体の16.6%を倍近く上回っていましたが、「中小企業」になると13.6%まで低下、「小規模企業」では、わずか7.9%にとどまっていました。BCPの策定状況は、企業規模により大きな差があると分かります。

・業界別策定割合
不動産:10.4%
建設:14.9%
運輸・倉庫:15.9%
サービス:18.6%
小売:17.2%
卸売:13.0%

業界別のBCP策定状況を調べた結果では、主に不動産領域と関係性の深いものをみていくと、「不動産」は最も低い10.4%で、全体の16.6%を大きく下回りました。「建設」は14.9%で、不動産に比べると策定が進んでいるものの、やはり全体平均には届きません。不動産領域に直接携わる業界は、BCPの策定に対する動きがやや鈍いようです。

不動産市場に与える影響が強い業界をみると、「運輸・倉庫」は15.9%とほぼ平均的で、「サービス」は18.6%で高めになりました。「小売」は17.2%、「卸売」で13.0%とやや低くなっています。

その他の業界では、「金融」業界が突出して高く、42.1%が策定済みでした。社会の安定を維持するため、事業活動をいかなる時でも継続せねばならないという、社会的責任意識が強く、積極的にBCPの策定を進める傾向にあるとみられています。

建設は「取引先の倒産」リスクを強く意識
・事業継続困難を想定するリスク
1位 自然災害:70.9%(前回比-1.6ポイント)
2位 感染症:69.2%(前回比+44.3ポイント)
3位 取引先の倒産:39.0%(前回比+8.7ポイント)
4位 取引先の被災:31.7%(前回比-1.6ポイント)
5位 火災・爆発事故:31.0%(前回比-3.5ポイント)
6位 設備の故障:30.6%(前回比-10.3ポイント)
7位 物流の混乱:30.5%(前回比-1.0ポイント)
8位 情報セキュリティ上のリスク:27.8%(前回比-6.5ポイント)
9位 自社業務管理システムの不具合・故障:25.6%(前回比-8.9ポイント)
10位 情報漏洩やコンプライアンス違反の発生:24.6%(前回比-2.9ポイント)
11位 経営者の不測の事態:20.2%(前回比+0.1ポイント)
12位 戦争やテロ:17.6%(前回比+3.6ポイント)
13位 製品の事故:17.5%(前回比-2.7ポイント)
14位 環境破壊:6.9%(前回比+1.0ポイント)
その他:1.9%(前回比+0.2ポイント)

BCPについて、すでに策定済みか、現在策定中、策定検討中とした策定意向をもつ企業を対象に、どのようなリスクで事業の継続が困難になると想定しているか尋ねたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が70.9%で、前年の調査に続き最も高くなりました。しかしポイントとしては、1.6ポイントの減少になっています。

続く2位には、インフルエンザや新型ウイルス、SARSなどの「感染症」が69.2%でランクインしました。新型コロナウイルスの影響が大きかったとみられ、前年に比べると44.3ポイントもの増加になっています。順位も10位からのジャンプアップとなりました。

3位は「取引先の倒産」で、8.7ポイント前年より増加し、39.0%です。こちらも新型コロナウイルス関連倒産が増加してきていることが背景要因のひとつに考えられるでしょう。以下、「取引先の被災」が31.7%、「火災・爆発事故」が31.0%などで続いています。

・上位3項目の想定リスク
【自然災害】
大企業:78.4%
中小企業:68.7%
建設:68.9%
不動産:68.5%

【感染症】
大企業:68.6%
中小企業:69.4%
建設:68.8%
不動産:60.6%

【取引先の倒産】
大企業:31.3%
中小企業:41.3%
建設:41.3%
不動産:27.3%

想定するリスクに関する上位3項目を、企業の規模別と業界別で分析した結果から、不動産関連業界のものを抽出してみると、トップの自然災害は、「大企業」で想定するケースが78.4%と高く、「中小企業」を10ポイント近く上回っていました。「建設」や「不動産」は68%台で、70%台後半の値となった「農・林・水産」や「金融」、「製造」、「運輸・倉庫」などに比べると、やや低めになっています。

これに対し、感染症の場合は「大企業」より「中小企業」がわずかながら高く、規模を問わず強い危機意識のある対象になっていることがうかがわれました。「建設」は68.8%と平均的ですが、「不動産」は60.6%で、他の業界に比べると低めの値になっています。

取引先の倒産については、「大企業」が31.3%と低め、「中小企業」は41.3%と10ポイント差で高くなっていました。新型コロナウイルスの影響長期化など、産業界や市場の激震が発生すると、とくに存続を危うくするような被害影響を被りやすく、混乱に陥りやすい傾向があるとみられます。

不動産関連の業界としては、「建設」が41.3%と他に比べて高く、取引先の状況が自社に与える影響も大きくなりやすい特性が表れました。一方「不動産」は27.3%にとどまり、あまり影響を受けないとみている企業が多いようです。

・BCP策定の効果
従業員のリスク意識が向上:57.4%(前年比-1.9ポイント)
事業優先順位が明確になった:37.7%(前年比+4.8ポイント)
業務の定型化・マニュアル化が進んだ:35.5%(前年比+0.1ポイント)
業務の改善・効率化:29.3%(前年比+6.3ポイント)
取引先からの信頼が高まった:22.2%(前年比-2.6ポイント)
実際の事業トラブルに遭遇し適切に対応できた:12.7%(前年比+5.5ポイント)
調達先・仕入れ先が拡大:7.9%(前年比-0.3ポイント)
在庫適正化:5.2%(前年比+0.3ポイント)
調達コストの削減:3.6%(前年比+1.0ポイント)
顧客の拡大:2.8%(前年比+0.2ポイント)
その他:5.7%(前年比+0.3ポイント)

BCPを策定済みの企業に、策定した効果を尋ねた結果では、「従業員のリスクに対する意識が向上した」がトップで、前年調査時に比べると1.9ポイント減少したものの、1位の座を保ちました。2位は「事業の優先順位が明確になった」の37.7%、3位は「業務の定型化・マニュアル化が進んだ」の35.5%でした。

4位には「業務の改善・効率化につながった」とする29.3%がランクインし、前年より6.3ポイントアップしています。順位も1つ上昇しました。

回答には、BCPを策定したことで、国から「事業継続力強化計画」の認定を得られ、補助金などの加点材料になっているといったメリットを挙げる声もあったそうです。

・BCPを策定していない理由
策定に必要なスキル・ノウハウがない:41.9%(前年比-2.0ポイント)
策定する人材が確保できない:28.7%(前年比-5.0ポイント)
書類作りで終わり実践的に使える計画にできない:28.6%(前年比+0.7ポイント)
自社のみ策定しても効果が期待できない:23.6%(前年比+0.4ポイント)
策定時間を確保できない:22.8%(前年比-3.8ポイント)
必要性を感じない:20.3%(前年比-3.7ポイント)
リスクの具体的想定が難しい:20.2%
策定費用を確保できない:11.9%(前年比-1.4ポイント)
ガイドラインなどに自組織の業種に即した例示がない:6.6%(前年比+0.9ポイント)
策定に際しての公的機関相談窓口が分からない:4.3%(前年比横ばい)
策定に際してコンサルティング企業などの相談窓口が分からない:3.2%(前年比-0.1ポイント)
その他:4.6%(前年比+0.1ポイント)

BCPについて「策定していない」とした企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が圧倒的に多く41.9%で、前年に比べると2.0ポイント減少したものの、なお2位以下に大きく差をつけての1位でした。

2位は「策定する人材を確保できない」の28.7%、3位が「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」の28.6%、4位は「自社のみ策定しても効果が期待できない」の23.6%でした。

6位の「必要性を感じない」は前年より3.7ポイント低下し、20.3%になっており、BCPが必要で、できれば策定したいと考える意識は着実に広がっていることがうかがわれます。

BCPの策定があまり普及していない不動産領域でも、新型コロナウイルス感染症の影響などから、リスクが顕在化し、BCPを策定することの重要さは広く認識されてきていると考えられます。しかし、人材や時間、スキル・ノウハウ、費用といった面が課題になり、実現できていないケースも多いのではないかと推察されます。

ピックアップニュースは以上になります。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
今後も皆様のお役に立つ内容をお届けしてまいりますのでご期待ください!

(画像はプレスリリース添付資料より)


▼外部リンク

株式会社帝国データバンク プレスリリース
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p200606.html

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