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高齢者なども賃貸住宅が借りやすく!?改正住宅セーフティネット法のポイント

「住宅セーフティネット法」が大きく改正された背景

年々、低所得者やひとり親世帯、高齢者だけの世帯やひとり暮らしのお年寄りなど、生活に支援が必要な人たちが増えています。そのような人たちは、条件の悪い住宅で生活をする傾向があります。

というのは、民間の賃貸住宅の場合、大家サイドが高齢者、障がい者、外国人に対して6割以上が強い拒否感を持っているという調査結果もあり、部屋を借りようとしても断られることが多くあるのです。

一方、低家賃で審査基準の低い公営住宅に入居しようとしても、公営住宅の供給戸数が少ないことや、民間の賃貸住宅に入居しにくい生活困窮者が多く集まることから、応募してもなかなか入居できないのが現状です。倍率は全国平均で4.8倍ですが、東京都で22倍、大阪市で10倍と、都市部で異常に高くなっています。

さらに、国や地方公共団体の財政難や民間の空き家や賃貸住宅の空室が増加しているなどの背景もあり、公営住宅のニーズがあるといっても公営住宅をどんどん新築するわけにはいかないようです。

そこで、民間の賃貸住宅の空き家増加といわゆる生活困窮者の住宅問題を解決するため、2017年4月に「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(以下、改正住宅セーフティネット法)」が成立しました。

民間の空き家や空室を持ち主が登録し、住宅に困っている人たちに空き家や空室を利用してもらおうという“一石二鳥”の内容が新たに加わりました。

「改正住宅セーフティネット法」の概要

改正前の、2007年に制定された法律は、条文が12条しかなく、低所得者の生活支援を目的とした簡単な法律でした。今回の法改正で条文は64条に膨らみ、多くの項目が新しく加わりました。

ここでは、今回の改正のポイントを説明していきます。

基本方針
「改正住宅セーフティネット法」の基本方針は、住宅に困っている人たちが借りるための住宅を確保することと、住宅に困っている人たちが住宅を借りる時に、大家から入居を断られないで安心して入居できるようにすることです。

これを実現するために、政府が予算措置と必要な支援措置を行っていくことも明記されました。

住宅確保要配慮者
「住宅確保要配慮者」とは、低所得者、生活保護を受けている世帯、ホームレス、外国人、高齢者、障がい者、子育て世帯、ひとり親世帯、3年以内に被災した人などを指します。

ここには、高齢者や子育て世帯など、低所得とは限らない人も含まれていて、たいへん広く定義されています。

空き家の登録制度
住宅確保要配慮者の入居を拒否しないという条件で、地方公共団体が空き家の登録制度を開設し、大家が空き家を活用しやすくしました。また、大家は登録住宅のリフォーム費用を、住宅金支援機構から低い金利で借りられるようになりました。

一方、地方公共団体が登録住宅を開示することや入居した人たちの監督や指導を行っていきます。

住宅確保要配慮者支援協議会
地方公共団体が指定した住宅確保要配慮者支援協議会が、入居相談や家賃債務保証など、入居をする人に必要な支援を行っていきます。また、地方公共団体の住宅部局と福祉部局、支援協議会の3者が連携をとっていくことが明記されています。

代理納付制度
大家の「家賃未払いに対する不安」を取り除くため、生活保護世帯が入居する場合、保護の実施機関が家賃を大家に直接払う「代理納付制度」ができました。

今後の課題

家賃補助
今回の法改正を受けて、政府と地方公共団体がそれぞれ2万円ずつ、最大4万円の家賃補助を出し、大家が家賃を低く抑えられる措置を講じました。

しかし、具体的な家賃補助については法律には明記されていません。明記されていないということは、財政状態の変化によっては、削減されたり打ち切られたりするという心配も出てきます。

低家賃帯の住宅が少なく、低所得層向けの賃貸物件が足りていないのではないかとの専門家の意見もあります。このようなこともあり、継続的な家賃補助は低所得者にとってはたいへん重要な支援なのです。

入居後の支援サービス
大家サイドの不安は、家屋や備品の修理、家賃の未払い、入居者同士のトラブル、孤独死など自分の所有する住宅が事故物件になることなど多岐にわたります。単に住宅確保要配慮者へ住居を提供するだけでは不十分で、これらの不安を取り除かないと、安定した供給につながりません。

大家サイドの不安を軽減するために、住宅確保要配慮者支援協議会は、民間事業者やNPOなどを活用して、住宅確保要配慮者の入居後の見守りや緊急時の対応、家賃の補助など、きめ細かいサービスが必要となります。

(画像は写真ACより)

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