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サブリースにおける問題点の真実

メリット多数とみられたサブリース契約でトラブルが多発中!
近年、相続税対策や固定資産税の重さを回避する策を急ぎたい人々のニーズが高まり、賃貸経営にあまり知識もノウハウももたない土地所有者が、業者の勧誘からサブリース契約による土地活用を始めた結果、トラブルに陥るケースが急増しています。

問題点を報道するメディアも増加していることから、注意が必要であるらしいというイメージを抱き始めている方もあるでしょう。しかし、具体的にどんな問題点があるのか、詳しくその内容を理解できている方はまだ少数と思われます。

空室リスクをカバーでき、安定した家賃収入が見込めることや、運営・維持管理に手間がかからないことなど、税金対策に有効で、誰もが手軽に取り組める新しい不動産投資のかたちとして登場、そのメリットが大きくアピールされてきたサブリースに、今何が起きているのでしょうか。今回はサブリースの問題点について、掘り下げてみましょう。

そもそもサブリース契約とは何か
問題点の本質を読み解くには、まずサブリースの仕組みそのものを正しく理解しておかねばなりません。そこでサブリース契約とは何か、あらためて確認しましょう。

通常の賃貸物件では、物件オーナーと入居者が賃貸借契約を締結し、賃貸しして家賃収入を得ます。間に仲介業者や管理業者などを挟むケースも広くみられますが、募集や家賃の回収、契約更新・終了手続き、物件状態の管理・運営・日常業務などを委託して手数料を支払うだけであり、物件オーナーはあくまで入居者と直接契約を交わします。そして手数料を差し引いた分が収益として、手元に残るものとなります。

一方、サブリースの場合、専門業者が物件オーナーからまるごとその物件を借り受け(一括借り上げ)、管理して実際の入居者となる第三者に転貸します。物件オーナーは業者との契約で毎月リース料金を受け取ることができるため、賃貸経営でネックとなる空室リスクを回避し、物件の入居状況にかかわらず、収益を安定化させられるのです。

この点が大きな魅力として謳われ、「30年一括借り上げ」、「家賃保証」、「空室が出ても安心」といったコピーのもと、広く宣伝募集がかけられてきました。

しかしどんな投資でもリスクやデメリットがあるのは必然で、この大きなメリットをもつと思われるサブリースにも、それを超える可能性のあるデメリットが内在しています。ここからサブリースをめぐるトラブルが生じているのです。

サブリースが抱える問題点
まず最もトラブルになりやすい点として、「家賃保証」される金額に関するものが挙げられます。契約締結の際には、近隣相場よりも有利な条件で収益を保証するかのような説明を行い、オーナーはその額のまま30年なら30年の確実な収入源を得たと考えて収支計画を立て、そのまま先に進めてしまうことがあります。

しかし実際には、家賃の金額は業者の裁量で決定できるものとなっており、開始から数年ごと、または近隣の競合物件の増加など市場変動に伴い、入居者募集のためとして家賃の引き下げを求めてくるのです。

サブリース契約の場合、多くが2年ごと、長くても5年ごとに賃料を見直す旨を記載しており、保証した期間中ずっと当初の設定を維持することはありません。よってその分、オーナーが受け取るリース料金も、年数が経つにつれ減額されていきます。

賃料減額に応じないオーナーには、一括借り上げの契約そのものを打ち切ると迫り、入居者らを近隣の自社物件に転居させるといった事例も報告されています。そこまでのケースではなくとも、業者からの減額請求は相当な強さでなされ得ることを、オーナーは考慮に入れておかねばなりません。

また収入面として、一般的な賃貸経営では物件オーナーに入る敷金や礼金、更新料も、入居者に貸しているのは業者であることから、オーナーには支払われず、サブリース業者の収益として回収されてしまいます。

長期の賃料収入が保証されるという謳い文句で勧誘し、マンションやアパートの建築受注を取ろうとする業者は、こうした説明を十分に行うことなく、遊休地の保有者に無理な収支計画でサブリース契約を勧め、リスクを押しつけるケースがあります。業者や関連会社は、その建築工事を受注した時点で十分な利益を確保しており、それが目的のビジネスモデルとなっていることもしばしばなのです。

メンテナンスの罠
賃料面以外にも、無視できない問題があります。建物は必ず経年劣化するものですから、運営開始後は、必要に応じて手を入れていかなければなりません。日常的なメンテナンスや、入れ替え時の原状回復にかかる小規模リフォーム、10年などまとまった期間で行われる塗り替えなどの大規模修繕と、どれも必要コストとして、オーナーの負担にかかってきます。

物件オーナーとしては、なるべく安く確実に、効率よく実行したいと思うのが当然で、それにあった業者の選定や実施時期の決定を行いたいと考えるでしょう。

しかしサブリースでは、そうした裁量権をオーナーに認めず、指定リフォーム業者を利用することや実施時期、内容などに制限を設けたり、管理する業者側が決定できる契約としていたりするケースが多くなっています。管理会社の主導で全てが決定されてしまい、オーナーには過大な費用負担だけが残る、そうしたトラブルは少なくありません。

免責期間に注意!
3点目に、サブリースでは免責期間や再免責期間に関する契約が含まれていることがあります。免責期間というのは、業者がオーナーに対し、保証家賃の支払いを行わなくてよいとする期間のことで、これにあたる期間は、たとえ入居者があっても業者からの支払いは全く受けられません。

再免責期間というのは、入居者が変更されるたびにこの免責期間を設けるというもので、これが1カ月といった指定があると、仮に10年で4回入退去があったとして、4カ月分の収入が失われます。

サブリース契約締結後の最初に設けられる免責期間が長すぎないか、再免責期間の設定はどうなっているか、この点を見落としてしまうと、大きく収益見込みが違ってきてしまうでしょう。いずれも契約書に記載される内容ですから、十分に確認が必要です。

情報弱者・法的弱者たるオーナーに保護が働きにくい環境
このようにサブリース契約には特有のリスクとなるデメリットがあるのですが、そのことが契約時点でオーナーには認知されないままとなっているケースが多く、それによってトラブルが急増しているのです。

リスクの多くは、業者との契約書から確認できるものですが、プロである業者と素人である個人オーナーとの間には、大きな情報・交渉力の差があり、それをもとに業者側が圧倒的に有利な内容で契約締結が迫られている、契約書があえて分かりにくく作成されているといった問題が浮上してきています。

不動産売買と違って、業者に厳格な説明義務が課されていないことや、悪徳な業者によるサブリース契約を規制する十分な法律・罰則がないこと、物件オーナーとしての契約であるため、およそ消費者保護の仕組みも機能させられないことといった社会制度上の困難もトラブルの背景にはあるでしょう。

いわば情報弱者であり、法的弱者であるはずの物件オーナーが保護されず、かえって一括借り上げで賃借している業者の方が賃借人として保護されることすら発生しています。

こうした現状を受け、消費者庁が注意喚起を行ったり、国土交通省が制度の改善を進めたりと、国も対策を開始していますが、オーナー自身でもどういった問題点があるのか、よく理解しておくことが非常に重要です。

サブリースを検討しているなら、まずそのメリットだけでなく、デメリットについても知識を深め、慎重な収支計画立案のもと、注意深く進めるようにしてください。

(画像は写真素材 足成より)

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