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知らないあなたは危険!?生産緑地法と2022年問題

そういえば“?”な場所にある微妙な農地
不動産価格の高騰が続く中、資産性に対する関心も高まっています。ところで、不動産投資や土地活用に興味関心をもっている方、すでに行っている方、生産緑地法についてはご存じでしょうか。あまり認知度は高くない法制度ですが、実は今、2022年問題として業界での注目が集まるところとなっています。

そこで今回は生産緑地法とはどんなもので、2022年に何が起こると考えられているのか、知っておきたい話題の最新情報を詳しくご紹介します。

まず生産緑地法という法律ですが、これは都市計画に関連するもので、ルールに従いながら農林漁業との良好なバランスを維持した開発を進め、住環境としても好ましい都市を形成していこうという目的から制定されており、1974年に施行されました。直近では2017年5月に改正が行われています。

直近の改正は、貴重な都市部における“緑の空間”について、近年の人口減少に伴う宅地ニーズの低下や、緑がもたらす景観や環境・精神衛生面などのメリット、さらには災害時の避難場所としての機能発揮が期待されることなど、現代ならではの視点から、そうした緑地・農地を積極的に保全していく方針が打ち出された内容となっていました。

地価の高い都市部の住宅街などで、こんなところに突然農地が!と驚いたことや、ゆったり確保された公園緑地があって、意外に感じられた経験はないでしょうか。

そうした場所は、この生産緑地法で定められた「生産緑地」である可能性があります。そして、この生産緑地の制度をめぐり、不動産市場に訪れうる大きな変化こそが、2022年問題とされているものなのです。どういうことか、さらに詳しくみていきましょう。

そもそも生産緑地とは?
生産緑地法が誕生した当時は、第二次ベビーブームの時期でもあり、宅地化へのニーズは非常に高いものがありました。そのため、同時期に改正された都市計画法とあわせ、開発を進める市街化区域と、一定の抑制をかけて緑地を残す市街化調整区域に分けた仕組みをつくることで、計画的な整備とニーズの吸収を両立させようとしていたのです。

しかし、生産緑地法で緑地を残すルールが生まれてからも、都市化は勢いを増して進み、バブル景気でさらに地価が上昇するといった状況になっていました。緑地から宅地への転用も止まることがなく、その結果、住環境の悪化や地盤への悪影響、災害に対する脆弱性などが問題として生じてきました。

これに対応するため、1992年の改正により、農地として保全する「生産緑地」と、宅地への転用を進めていく「宅地化農地」と土地の目的を定める決まりが新たに導入されました。これが今にいたって存在する「生産緑地」です。

生産緑地は、生産緑地地区に指定された区域内の土地で、以下の条件を満たすものとされています。まず、住民の良好な生活環境の維持確保に効用があり、かつ公共施設などの施設向けに供する土地としても適していること、500平米以上の規模があること、そして排水面などを含め、農林漁業の継続が可能な条件を備えていることです。

生産緑地に指定されると、農地としての管理が義務付けられ、30年間はそれを保持することが求められます。営農に関係のない建築物を建てたり、宅地の造成を行ったりすることは認められません。

30年間に満たない状況でこの制限を解除してもらうには、営農の主な従事者が死亡したり、病気や障がいなどで農業従事ができなくなったりした場合だけです。

これに該当する場合でも、自治体が買い取るか、自治体が他の農家に買い取りを斡旋するなどして買い取り先を決めるか、可能な限り緑地を維持するための対策がとられ、それでも買い手がつかない場合に、農地としての管理義務がようやく解かれるなど、土地利用は大きく制限されるものとなっています。

生産緑地のメリット
このように説明すると、生産緑地は所有者にとってマイナスばかりに感じられますが、それを補完するため、税制優遇の対象となる仕組みがあわせて定められています。土地の所有で大きなポイントになる固定資産税や相続税の負担において、生産緑地はメリットがあるのです。

まず一般に農地は宅地より固定資産税が低く設定されており、生産緑地もこの農地としての評価・課税がなされる決まりになっています。この違いはきわめて大きく、宅地に比べると数百分の1といった大幅な軽減が受けられます。

また、相続や遺贈で生産緑地を取得し、引き続き営農する意思を示せば、一定要件のもと相続税の一部について納税猶予を受けることもできます。この段階では猶予ですが、農業相続人が死亡した場合や、後継者への生前一括贈与がなされた場合、市街化区域内農地で20年以上営農を続けた場合(ただし三大都市圏の特定市では20年でなく終身の継続が必要)、猶予分が免除されるものともなっています。

さらに贈与税に関しても、同様に一定の要件を満たせば、猶予や免除の申請が行え、税制メリットを発揮できるようになっているのです。

2022年問題とは?
こうした生産緑地ですが、やはりこれを管理・所有する人にとって、制約の多さ、自由に土地の活用が行えないことは、大きな困難になっています。ここで浮上するのが「2022年問題」です。

現在、各地に存在する生産緑地の多くは、1992年の改正によって指定を受けたものです。ということは、先述した30年間の営農義務が外れるのが、2022年になります。

30年が経過すれば営農をやめられますから、このときを待っていた所有者らが一斉に土地を売りに出すのではないか、そうすると宅地転用が進んで供給過剰になり、価格が暴落、市場の大混乱が起きるのではないかという懸念が生まれているのです。業界では、これを「2022年問題」と呼んでいます。

営農をやめた場合の生産緑地は、先にみたように、原則自治体が買い取ることとなっていますが、その多くを買い取れるほど財政に余裕のある自治体は少ないと考えられ、次の他の農業従事者への斡旋も農家の減少などから、順調に進む可能性は低いでしょう。そうなると、宅地転用が可能になります。

しかし、2022年問題はさほどの影響をもたらさないとする見方もあります。その理由としては第1に、税制メリットと関連し、生産緑地解除を行ってしまうと、固定資産税や相続税が高額になってしまうことがあります。相続税の猶予を受けているケースも6割近くといわれ、営農をやめた場合、所有者は猶予分と利子税を負担しなければならなくなります。

第2に直近の改正で、生産緑地に関する条件や制限が緩和された「特定生産緑地指定制度」が創設されていることがあります。自治体から特定生産緑地の指定を受ければ、営農に直結する建築物でなくとも、直売所や農家レストランを建てることが可能になります。

買い取り申し出の期間を10年ずつ先送りにできる仕組みにより、税制優遇措置、特例措置を継続して受けていくことも選びやすくなりました。これにより、解除ではなく特定生産緑地の指定を望むケースも多くなると見込まれるのです。下落した市場価格での売却と多額の税負担より、緑地としての維持が賢い選択である場合は確かに少なくないでしょう。

営農継続を支援するため、都市農地の賃借の円滑化に関する法律案なども出されており、所有者にとっては売り急がない方がよいような環境整備が、さらに手厚くなっていることもあります。生産緑地所有者は、より多角的に判断して行動するべき時代になっていくでしょう。

とはいえ、営農をめぐる環境はやはり厳しく、土地の大きな暴落までは発生しなくとも、一部の所有者は生産緑地を解除して宅地化すると考えられますし、特定生産緑地としてからの10年経過後や、次の相続におけるタイミングなど、徐々に手放す判断をするケースが増えてくることは想定しておかなければなりません。

購入を検討している不動産のエリアが、生産緑地の多い地域である場合、供給増による市場の変動、価格下落傾向の発生には、十分注意していく必要があるでしょう。

生産緑地の所有者も、不動産購入の検討者も、2022年以降の土地活用について、関連する知識を深めながら、慎重に、かつ適切な時期を逃すことのない判断を進めていかねばなりません。

(画像は写真素材 足成より)

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