クラスコの資産運用

収益物件

気になるマンションの寿命、その後に来る建て替えは?

本当のマンション寿命とは?いつまで快適に暮らせる?
住まいは一生に一度となる人も多い、とても大きな買い物です。新築物件にしろ中古物件にしろ、マンション購入を検討しているなら、建物として寿命はどのくらいなのか、いったいいつまで暮らすことができ、その後はどうなるのか、気になるところでしょう。

思うよりも早く老朽化で住めなくなってしまったら?といった不安や、建て替えや解体になったら費用負担は、その後の生活はどうなるのだろうといった心配もあります。そこで今回はマンションの寿命と建て替えなどの実際について、考えていきます。

観点が違えば寿命も違う?
まず、一般的指標からマンションの寿命を考えてみましょう。国土交通省によるコンクリート建造物の物理的推定によると、RC造の研究例として、その寿命は117年と推定したことが紹介されています。1951年の大蔵省主税局による「固定資産の耐用年数の算定方式」でも、コンクリート部材の場合、一般建物の耐用年数は120年、外装仕上げによってはさらに延命可能で150年とされていますから、単純に建築物としての寿命を考えると、100年を軽く超える、一代の人間より長いものになるといえそうです。

昨今は200年の耐久性をもったコンクリートの仕様が確立され、さらに大手ゼネコンでは500年もつコンクリートの開発も進んでいるとされますから、これから購入するなら、マンションの寿命は十分に長いと考えてもよさそうに思われます。

一方で、税金計算の面から“耐用年数”とされる値に目を向けると、マンション購入における税務上耐用年数は47年となり、50年ももたないかのような印象を受ける指標となっています。これはどういうことかというと、法人などが購入費用をまとめて支出計上すると、該当期の利益が大幅に縮小され、納税額を少なくしてしまうことができます。

しかし、その後は支出が0となり税額がアップ、長く利活用できるマンションのような資産であるのに、実態とはまるで合わない課税がなされることになってしまいます。そこで分割して費用計上できる期間を決めて適用させる、減価償却という仕組みがあり、ここで仮に定められているのが「47年」という数値なのです。

社会変化や経済的観点など、さまざまな要素も含めて価値が維持される期間として、あくまで税務上の措置という事情から算出されたものととらえればよく、建築物自体は物理的にそれ以上の寿命をもつのも当然となっています。

では、実際に存在するマンションの平均寿命でみるとどうでしょうか。欧米では100年以上前に建てられた集合住宅、マンションも珍しくありませんが、日本では2013年に取り壊しとなった「同潤会アパート」が84年で、きわめて長寿命だったとされています。

国内でマンション供給が本格化した1963年~1964年頃の物件は築30年程度で建て替えられたケースも多く、東京カンテイが2014年に調査した「マンション建替え寿命」では、全国平均で33.4年、東京都で40.0年となっていました。東京都については、同潤会アパートが引き上げた面もあるため、およそ30~40年で寿命とみなされ、建て替えられたケースが多いといえます。

1960年代と現在では、建築技術など背景が大きく異なるため、ここまで短命になることはないと考えられますが、コンクリートの建築物としては、それよりも前の1951年から100年以上の寿命が見込まれているにもかかわらず、実際には30年あまりで建て替えに踏み切られているという現状……これはどう理解すべきか、中古マンション購入などを考えるにあたっても、やはり見過ごせないポイントです。

これまでのマンションにおける短命さの理由
マンション寿命が、これまでのケースでかなり短い30~40年となっている理由の第一には、耐震面の問題があります。地震大国である日本では、耐震性能は重要なポイントです。1981年を境に旧耐震基準と新耐震基準の違いがあり、1981年以前のマンションでは、コンクリート性能や使われている鉄筋の量、施工方式などが、およそ現在の物件より耐震性の低いものとなっています。

旧耐震基準でも、比較的耐震性があるものもあるため、実際にはそのうちの6~8割が問題ありとなるようですが、それならば現況を調査して耐震補強など改修工事を施せばよいだろうとも考えられますね。

しかし実際には現行の耐震基準並みの耐震性を確保するのは難しかったり、仕様や美観などから工事を行うことが困難であったりするケースが少なくなく、あまり耐震化は進んでいません。かえって建て替えの方が現実的と判断されたり、耐震補強も建て替えも難しいため取り壊しとなったりすることも多く、それによって寿命が短くなっているところがあります。

2点目には、建物としての物理的寿命は長くとも、それはしっかりと建築され、かつ適切に定期的なメンテナンスが施されていてはじめて成り立つもので、現実にはそうなっていない物件も多いことが挙げられます。

1970年代のような高度成長期には、ビル建設も盛んな建設ラッシュで、マンションも次々に建てられていきました。そうした中、質の低いコンクリート材料が用いられたり、施工品質が低いまま急ピッチで完成にもっていかれたりした建物もあり、それらに関しては、すでに経年劣化が深刻となっています。

長期修繕計画に基づくメンテナンスの考え方が広く定着したのも、ある程度近年になってからのことで、そうした維持管理が不十分な物件では、どうしてもマンション全体での寿命が短くなっています。

3点目には、建築物そのものはまだ寿命を全うできるだけのスペックを維持していても、社会情勢の変化や経済活動上の観点などから、再開発や区画整理にかかり、建て替えや取り壊しを迫られるケースがあります。この30~40年における社会変化の大きさを考えれば、ある程度は仕方がないものと思えるのではないでしょうか。そうした理由で、短命化されたマンションもあるのです。

建て替えは起きる?
このようにマンションの寿命は一概に算定することが難しく、古い物件の購入を検討する際には、より多角的な角度で注意深く検証していく必要があります。

さてでは何らかの理由により、寿命と判断されたマンションはその後どうなるのでしょうか。取り壊して売却するか、建て替えるかが基本の選択となりますが、住み続けられる建て替えは本当に発生するのでしょうか。費用や手続きはどうなるか気になるところです。

実際のところ、建て替えが必要とみられるマンションでも、建て替えが行えたケースは一部に限られます。なぜ建て替えが難しいか、背景には大きく3つの理由があります。

1つは、区分所有者と議決権で、それぞれ5分の4以上の賛成が必要というハードルです。建て替えとなると、費用も発生しますから、まだ住めるならこのまま住みたいという意見も当然出ますし、古い物件では管理組合が機能していない状態で、意見のとりまとめも費用ストックも厳しいケースが少なくありません。

2つ目には、容積率制限の問題があります。容積率に余剰分がない場合、延床面積を増やせず、建築費用をまかなえる見通しが立ちにくくなります。高度成長期以降の物件では、容積率いっぱいに建てられたマンションも多く、その場合建て替えにかかる費用が直接住民負担としてかかってくるため、積み立てを行っていても、多額の持ち出しが必要になりがちです。こうなると、建て替えの合意をとりつけるのはさらに困難でしょう。

3つ目として、容積率に余裕があっても、増やした部分に需要がなければ費用の回収が実現されないため、立地に優れ購入希望者の多く見込める人気エリアでなければ難しいという点もあります。

このように建て替えメリットが非常に大きく、合意形成がしやすい条件に恵まれていたケースしか、建て替えは実現していないのが現実なのです。耐震性の低いマンションについて、建て替えを推進すべく、2002年には「マンションの建て替え円滑法」が制定され、容積率制限の緩和なども盛り込まれましたが、やはり費用負担がネックとなったり、工事中の仮住まい確保や移動が難しい住民が多かったりと、マンションの建て替えは思うように進んでいません。

いかがでしたか。マンション寿命と建て替えについて考えてきましたが、寿命については建築時の仕様だけでなく、住民ら自身の管理でつくりあげていく部分も大きいことから、単純にあと何年住めると計ることはできません。しかし適切な維持管理の仕組みがあるか、新築でも中古でもよく確認することは、長生きのマンションを選ぶ第一歩でしょう。

建て替えも容易でないことは理解しておきたい注意点です。しっかりとした修繕計画の有無と、築年数に見合う積み立て、管理組合の機能度や居住者の高齢化の度合い、立地ニーズが維持できるエリアかどうかなど、年数の経過した物件を購入する場合は、多角的にチェックしておいてください。

その上で、建て替えとなれば、発生した追加費用が居住年数にかかわらず、負担すべきものとなりますので、その間の仮住まいや引っ越し費用と含め、必要になると考えておきましょう。

(画像は写真素材 足成より)

PAGE TOP